五千回の生死/宮本輝
2006年5月 7日
好きな作家の趣向が似ている、と思っていた人が誉めていたので他の買い物のついでにAmazonにて購入してみました。
「泥の河」「優駿」などを書かれている宮本輝の短編集。
最初からなんなんですが、実は短編は苦手であまり読まないのです。
しかしこの方の話の出来上がり方(?)、そして読後に長くひきずるなんとも言えない重さは長編小説のそれを上回る感じがしました。
核心は語らず、べたべたと感情を書く事もせず、盛り上げるわけでもなく、冷静な状況描写(これがすごい。)を連ねてゆく。
読む側に情報を知らん顔してぽろぽろと落としてゆき、最大限に世界観を作らせておいて、それじゃつまりこういくんだろー、、、と思って期待して次頁をめくるとそこで終わっているわけです。すすすばらしーー
なかでも「トマトの話」。
生きているうちに自分の中に少しづつ残されていく染みのような、手のひらにいつのまにか埋まっていた鉛筆の芯のような、普段意識していないけどどうしようもなくそこにありつづけるものについてさらっと描写されている、そんな風に感じました。
題材が重いだけにこのさらっと感。これを洗練というのか、書き手の心の強さなのか。
「バケツの底」のどうしようもない感じもなぜか心がやすらぎます。
しかしながらこれで味をしめてこのあと読んでみた「泥の河」はどうも。
舞台になっている土地の持っている独特な雰囲気が物語の基本の味付けになっているようで、それが時代が昔なこともあって私のつたない想像力が追いつかず、最後までそこに近づけないまま終わってしまいました。ちょっと残念。
もっと自分がくたびれてきたらもう一回読んでみたらいいんだろな。
とかいって読まないんだろな。ァヘ
今はMy favorite町田康が進行中です。
Posted by tos
